知られざる剥離リスクの正体|塗料に残る“界面活性剤”が外壁を破壊する理由
2025.12.04 (Thu) 更新
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皆さんこんにちは!ブログを執筆させていただきますラディエントの結城です。
はじめに
外壁塗装のトラブルで最も相談件数が多い現象の一つが、塗膜剥離です。
雨水が浸入した、下地処理を怠った、密着プライマーを使わなかった--こうした一般的な原因はよく知られています。しかし現場では、工程通りに施工したにも関わらず、数年以内に塗膜がペロッと剥がれるケースが存在します。
その犯人として、近年専門家の間で注目されているのが、水性塗料に含まれる「界面活性剤」の残留です。
施工者でも意識していないこの現象は、目視では分からない静かな塗料不良の種となり、後年、剥離という形で露見します。
Contents
なぜ塗料に界面活性剤が入っているのか
まず、界面活性剤は悪者ではありません。
水性塗料を水で均一に分散させ、塗りやすくし、塗膜形成を助ける重要な成分です。
塗料メーカーが界面活性剤を配合する目的は以下の通りです。
・顔料と樹脂を均一に混ぜる
・塗料の伸び、滑りを向上
・水で希釈しても安定した性能維持
・塗膜形成時の泡切れを改善
本来、塗膜乾燥の過程で界面活性剤は揮発・移動して影響を残さない前提なのですが…
危険な「残留」が起きる条件
現場では、次のような条件が一つでも重なると、界面活性剤が塗膜表面に残りやすくなります。
低温施工(10℃前後の冬場)
乾燥スピードが落ち、界面活性剤が揮発する前に塗膜が硬化してしまい、塗膜内部に閉じ込められる
結露・朝露・高湿度の季節(春・秋)
塗膜が水分を含んだまま硬化し、界面活性剤が表面に滲み出る
厚塗り・塗り重ねが早すぎる
界面活性剤が流動しきらないまま次の層で押し込まれてしまう
希釈率の誤り(入れ過ぎ)
界面活性剤の比率が相対的に高まり、残留確率が跳ね上がる
残留すること何が起こるのか
残った界面活性剤は、塗膜を化学的に弱体化させるだけだなく、密着阻害剤として悪影響を及ぼします。
主なトラブル
●ベタつき
→触ると微妙に粘る「未乾燥感」が長期化
●汚れ付着
→大気中の油分・排ガスが吸着して黒ずむ
●密着不良
→上塗りや旧塗膜に密着しない「離塗膜になる」
●剥離発生
→施工から1~5年で大面積剥離へ発展
特に上塗り前に界面活性剤が表層に残留すると、下塗りとの接着が低下し、層間剥離が起きやすくなります。
これは外見では判断できないため、施工時点でしか防げない厄介なリスクです。
実はメーカーも「対策を前提」にしている
多くの塗装職人は知らないのですが、塗料メーカーの技術資料には「乾燥条件」の明記が必ず存在します。
・気温〇℃以上
・湿度85%以下
・重ね塗り乾燥時間〇時間以上
これらの数字は、「この条件を守らないと界面活性剤が残留する可能性がある」という警告なのです。
つまりメーカーは、あえて言わないだけで界面活性剤リスクは現場管理でしか回避できないことを前提にしています。
プロが実践する界面活性剤残留の回避術
同じ塗料でも職人の腕次第で剥離率は数倍変わります。
以下はマイナーですが、効果絶大の対策です。
✅朝露を拭き取ってから施工
※放置施工は界面活性剤残留率が跳ね上がる
✅塗装面の温度を測って判断
気温ではなく塗布面温度を10℃未満ならアウト
✅希釈は現場状況に応じて最小限
「メーカー最大希釈率=適量」ではありません。
✅乾燥時間を必ず守る
短縮は最大の敵。剥離予備軍を生むだけ
✅塗り厚管理(塗膜厚)
厚塗りは界面活性剤だけでなく水分・可塑剤トラブルも誘発
この問題は今後さらに表面化する
近年、住宅市場では水性塗料・低VOC化が急速に進行しています。
環境配慮には素晴らしい方向性ですが、その裏では界面活性剤含量の増加という宿命があります。
つまり、施工管理を誤れば剥離リスクは年々高まっていく未来が待っているのです。
まとめ
塗膜剥離は、見た目だけで原因を特定できるほど単純ではありません。
とくに界面活性剤残留は
・目で見えない
・その場では問題化しない
・施工管理の知識次第で硬化が変わる
という施工者の知識格差がそのまま品質差になる領域です。
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